目次
プロジェクト概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| クライアント | 大手物流企業様(従業員6,000名超) |
| 業界 | 物流・運輸 |
| 対象業務 | 配車計画の策定・最適化 |
| 支援期間 | 4ヶ月(要件定義〜本番稼働〜初期安定化) |
| 成果 | 配車計画策定時間を1日4時間→30分に短縮。車両稼働率12%向上 |
背景と課題
物流業界は、2024年問題(ドライバーの時間外労働規制)以降、深刻な人手不足に直面している。同社も例外ではなく、毎日の配車計画の策定に多大な労力を費やしていた。
同社が抱えていた課題:
- 属人的な配車計画: ベテラン配車担当者3名の経験と勘に依存。担当者が休むと、配車効率が大幅に低下
- 計画策定に4時間/日: 毎朝4時から、当日の配車を手作業で組み立て。200台超の車両を15名の担当者でカバー
- 車両稼働率の低迷: 空車率が高く、車両稼働率は68%にとどまっていた
- ドライバーの不満: 非効率なルート設計により、不必要な長時間運転が発生
> 「毎朝4時起きで配車を組んでいるが、ベテランが引退したらどうなるのか。この属人的なやり方は限界に来ている」── 同社 運行管理部長
Wizitのアプローチ
なぜWizitが選ばれたか
同社は当初、大手SIerに配車最適化システムの開発を相談していた。しかし、提示された見積もりは1.5億円、開発期間は18ヶ月。同社の経営陣は「そこまでの投資をする前に、まずAIで何ができるか検証したい」と考えた。
GX社経由でWizitに相談が入り、代表の立道が「AIエージェントを使えば、既存データの活用で短期間にプロトタイプが作れる」と提案。4ヶ月・数百万円規模での実現可能性を示し、プロジェクトが開始された。
Phase 1: データ分析と要件定義(1ヶ月目)
まず、同社の過去2年分の配車データ(約15万件)を分析し、ベテラン担当者の「暗黙知」を構造化した。
分析で判明した配車の「暗黙ルール」:
- 特定顧客への配送は、指名ドライバーが暗黙的に決まっている
- 道路状況の季節変動(冬期の山間部回避等)が頭の中だけにある
- ドライバーの得意・不得意(大型車両の運転スキル、夜間配送の可否等)を考慮
これらのルールを体系化し、AIエージェントの「知識ベース」として構築した。
Phase 2: AIエージェント構築(2ヶ月目)
アーキテクチャ設計:
- 配車最適化エンジン: 過去の配車パターンと制約条件(車両サイズ、ドライバースキル、配送時間枠)を学習
- LLMベースの対話インターフェース: 配車担当者が自然言語で条件を指定(「明日の午前中に冷蔵車3台を横浜エリアに」等)
- リアルタイム調整機能: 当日の急な変更(キャンセル、追加配送、ドライバー欠勤)にAIが代替案を提示
Wizitならではのアプローチ:
立道は外資コンサル時代、大企業のシステム導入で「現場が使わないシステム」を何度も見てきた。その経験から、E社プロジェクトでは配車担当者が毎日のワークフローの中で自然に使えるUIを最優先で設計した。
具体的には、配車担当者が従来使っていたExcelの配車表と同じレイアウトをベースに、AIの提案をオーバーレイ表示する形にした。新しいツールの学習コストを最小化し、「いつものExcelに、AIアシスタントがついた」感覚で使えるようにした。
Phase 3: パイロット運用(3ヶ月目)
関東エリアの配送(全体の約30%)を対象にパイロット運用を開始。
パイロット中の改善サイクル:
- 毎朝:AIが配車案を生成 → 配車担当者が確認・修正 → 修正内容をAIにフィードバック
- 週次:修正率の推移を分析。初週は修正率35%だったが、4週目には12%まで低下
- 月次:ベテラン担当者がAIの配車案を「及第点」と評価
Phase 4: 全社展開と安定化(4ヶ月目)
パイロットの成功を受け、全国5エリアに一斉展開。
成果
定量成果
| 指標 | Before | After | 改善率 |
|---|---|---|---|
| 配車計画策定時間 | 4時間/日 | 30分/日 | 88%短縮 |
| 車両稼働率 | 68% | 80% | 12pt向上 |
| 空車走行距離 | 月間12,000km | 月間7,800km | 35%削減 |
| 配車担当者の残業時間 | 月40時間 | 月8時間 | 80%削減 |
定性成果
- 属人化の解消: ベテラン担当者の暗黙知がAIに移転され、誰が配車を組んでも同等の品質に
- ドライバーの満足度向上: 非効率なルートが解消され、ドライバーからの苦情が激減
- 経営の意思決定支援: 配車データの可視化により、車両の増減やエリア再編の判断材料が揃った
Wizitの支援で重視したこと
このプロジェクトで最も重視したのは、「ベテランの知恵を否定しない」ことだ。
AIを導入すると聞いて、ベテラン配車担当者は当然警戒する。「自分たちの30年の経験が、機械に置き換えられるのか」と。
Wizitのアプローチは、その逆だ。ベテランの暗黙知をAIの知識ベースの核に据え、「あなたたちの経験がAIの先生になる」と位置づけた。結果として、ベテラン担当者はAIの「トレーナー」として積極的にプロジェクトに参加し、AIの精度向上に貢献してくれた。
「現場のプロフェッショナルを味方につける」——これが、大企業のAI導入を成功させる最大の鍵だと、代表の立道は考えている。