目次
プロジェクト概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| クライアント | 大手通信会社様(従業員10,000名超) |
| 業界 | 通信・IT |
| 対象業務 | カスタマーサポート部門の生成AI活用 |
| 支援期間 | 3ヶ月(PoC再設計〜本番稼働) |
| 成果 | 過去2回頓挫したPoCを3ヶ月で本番化。問い合わせ一次対応の40%を自動化 |
背景と課題
同社は、カスタマーサポート部門で生成AIを活用したいと考え、過去2回PoCを実施していた。しかし、いずれも「PoCとしては成功」と評価されながら、本番導入には至らなかった。
過去のPoC失敗の構造的要因:
- 1回目(大手SIer主導): 技術的には動いたが、現場のオペレーターが使い方を理解できず、「結局人が対応した方が早い」という結論に
- 2回目(AIベンダー主導): 精度は高かったが、既存のCRMシステムとの連携が技術的に困難。インテグレーション費用が当初見積もりの3倍になり凍結
同社のDX推進部長は、こう振り返る。
> 「PoCは"うまくいった"のに、本番には進めない。この繰り返しで、社内のAIへの期待が冷めてきていた」
Wizitのアプローチ
なぜWizitに声がかかったか
Wizitの代表・立道は、外資系コンサルティングファーム時代から大企業のDXプロジェクトに多数携わり、「戦略は立てたが実行されない」という問題を何度も目の当たりにしてきた。その経験から、Wizitは「PoCから本番まで一気通貫で伴走する」ことを基本スタンスとしている。
同社のケースでは、GX(GenerativeX)社経由で案件を受託。GXとの協業体制のもと、Wizitが実装の現場に深く入り込む形でプロジェクトを進めた。
Phase 1: 失敗分析と再設計(1〜2週目)
まず、過去2回のPoCが「なぜ本番に進めなかったか」を徹底分析した。
発見した3つの根本原因:
- 技術と業務の分離 : AIの精度は検証したが、オペレーターの業務フローへの組み込み方を設計していなかった
- システム連携の後回し : CRM連携を「本番化の際に対応」としていたが、それが最大のハードルだった
- 成功基準の曖昧さ : 「PoCが成功したら本番化」としていたが、「何をもって成功とするか」が定義されていなかった
この分析を踏まえ、「本番稼働から逆算したPoC設計」に切り替えた。
Phase 2: 本番逆算型PoC(3〜6週目)
従来のPoCとの最大の違いは、最初からCRM連携と業務フロー統合を含めて検証した点だ。
技術構成:
- 生成AI(LLM)による問い合わせ内容の自動分類・回答案生成
- 既存CRM(Salesforce)とのリアルタイムAPI連携
- オペレーター向けUIの設計(AIの回答を「参考情報」として表示)
業務設計のポイント:
- オペレーターが「AIの回答をそのまま送信」するのではなく、「AIの下書きを確認・修正して送信」するワークフローを設計
- これにより、AI精度が100%でなくても運用可能な仕組みにした
- オペレーターのフィードバックを学習データとして蓄積する循環を構築
Phase 3: 本番稼働と定着化(7〜12週目)
PoCの結果を踏まえ、段階的に本番展開。まず問い合わせの3カテゴリ(料金プラン、契約変更、障害報告)から開始し、2週間ごとに対象カテゴリを追加。
定着化の工夫:
- 現場リーダー3名を「AIチャンピオン」に任命し、チーム内での普及を推進
- 週次の改善ミーティングで、AIの回答精度とオペレーターの利用率を可視化
- 「AIが苦手な質問パターン」を収集し、継続的にプロンプトを改善
成果
定量成果
| 指標 | Before | After | 改善率 |
|---|---|---|---|
| 一次対応の自動化率 | 0% | 40% | — |
| 平均対応時間 | 8.5分 | 5.2分 | 39%短縮 |
| オペレーター1人あたり対応件数 | 45件/日 | 62件/日 | 38%向上 |
| 顧客満足度(CSAT) | 3.6 / 5.0 | 4.1 / 5.0 | +0.5pt |
定性成果
- 「PoC地獄」からの脱却: 3度目の挑戦で本番稼働を実現。社内のAIへの信頼が回復
- オペレーターの意識変化: 「AIに仕事を奪われる」から「AIが面倒な下調べをしてくれる」へ
- 継続改善の文化: オペレーター自身がAIの改善提案を出す仕組みが定着
Wizitの支援で重視したこと
このプロジェクトで最も重視したのは、「技術の完成度」より「業務に組み込めるか」という視点だ。
過去2回のPoCは、AI単体の精度を追求するあまり、現場のオペレーターが実際に使えるかどうかを後回しにしていた。Wizitは逆のアプローチを取り、「80%の精度でも、オペレーターの業務に自然に組み込めるなら、それは本番稼働できる」という判断基準を設定した。
代表の立道が外資コンサル時代に何度も見てきた「素晴らしい戦略が実行されない」問題。その根本原因は、現場の業務実態を軽視した設計にあった。この経験が、Wizitの「業務起点のAI実装」というアプローチの原点になっている。