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「ベンダーから出てきた提案書が、どれも期待外れだった」 「開発が始まってから、追加費用の請求が止まらない」
これらのトラブルの原因は、ベンダーではなく、発注側が作成したRFP(Request for Proposal:提案依頼書)の不備にあります。 曖昧なRFPからは、曖昧な提案と見積もりしか生まれません。
2025年、AI活用やアジャイル開発が前提となる中で、RFPの書き方もアップデートが必要です。 本記事では、ベンダーのポテンシャルを最大限に引き出し、プロジェクトを成功に導くための「最強のRFP作成術」を解説します。
RFP作成の現場
1. RFPを書く前の「RFI」の重要性
いきなり要件を固めるのは危険です。市場にどのような技術があるかを知らないからです。 まずはRFI(Request for Information:情報提供依頼書)を発行し、ベンダーから最新の技術動向やパッケージ製品の情報を集めます。
* 「AIでここまで自動化できるのか」 * 「この機能はSaaSを使えば開発不要だな」 という気付きを得てから、RFPを作成することで、無駄なスクラッチ開発を防げます。
2. 必須項目:ここが抜けると失敗する
RFPの骨子となる項目です。Wizitが提供するテンプレートには以下が含まれています。
2-1. 背景と目的(Why)
「基幹システムを刷新したい」は目的ではありません。「リアルタイムな在庫把握により、欠品率を5%以下にする」が目的です。 ここが熱く語られていないと、ベンダーは単なるシステム屋として振る舞います。
2-2. 業務要件(Functional Requirements)
「現行通り」という言葉は禁止です。 現行業務の何を残し、何を捨てる(BPR)のか。業務フロー図(BPMN)を添付し、システム化の範囲を明確にします。
2-3. 非機能要件(Non-Functional Requirements)
ここが追加費用の温床です。 * 可用性: 24時間365日稼働が必要か?(メンテナンス時間は?) * 性能: 何人のユーザーが同時アクセスしても3秒以内に表示するか? * セキュリティ: データの保管場所や暗号化レベル。
2-4. AI・データ活用要件【2025年版】
* データの権利: 生成されたデータ、学習済みモデルの権利はどちらに帰属するか。 * AIモデルの更新: 誰がどのような頻度で再学習(Fine-tuning)を行うか。
3. ベンダーを試す「問い」の設計
RFPは、ベンダーを「選ぶ」だけでなく「試す」ツールでもあります。 あえて詳細を決めず、ベンダーの提案力を問う項目を設けます。
* 「この業務課題に対して、生成AIを用いた解決策を提案してください」 * 「プロジェクト期間を20%短縮するためのアジャイル開発のアプローチを示してください」
これに対して、既存パッケージの機能を並べるだけのベンダーか、踏み込んだ提案をしてくるベンダーかで、パートナーとしての資質を見極めます。
4. 評価基準(スコアリング)の事前設計
提案書を受け取ってから「なんとなく」で選んではいけません。RFP発行前に評価シートを作成します。
* 機能適合率 (30%): 要件を満たしているか。 * 実現性・技術力 (20%): 体制図、類似実績。 * 価格 (30%): イニシャルコストだけでなく、5年間のTCO(総所有コスト)。 * 熱意・提案力 (20%): リスクへの言及、プレゼンの質。
5. まとめ:RFPは「設計図」ではなく「手紙」
完璧なRFPを書く必要はありません(完璧な要件など存在しないからです)。 重要なのは、発注側の「本気度」と「悩み」を正直に伝え、ベンダーを「下請け」ではなく「共に課題を解決するパートナー」として招待することです。
Wizitでは、RFP作成の代行や、ベンダー選定の支援も行っています。あなたのプロジェクトの「最初のボタン」を掛け違えないよう、サポートします。
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[テンプレート配布] 「標準RFPテンプレート(Word)」 「非機能要件チェックリスト(Excel)」 を無料でダウンロードいただけます。