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「ダッシュボードを作ったが、誰も見ていない」 「数字が多すぎて、結局何が重要なのかわからない」
DXの第一歩としてBIツール(Tableau, PowerBI, Looker Studio等)を導入する企業は多いですが、「使われるダッシュボード」と「使われないダッシュボード」の差は歴然としています。
その差は、ツールの機能ではなく「設計思想(Design Philosophy)」にあります。 本記事では、経営層や現場リーダーが意思決定を行うための、"アクションにつながる"ダッシュボード設計の極意を解説します。
ダッシュボードUIの例
1. 失敗するダッシュボードの共通点
まず、やってはいけない「アンチパターン」を知りましょう。
* 全部盛り(All-in-One): 「あれもこれも見たい」という要望を全て叶え、1画面にグラフが20個も並んでいる。→ 情報過多で思考停止します。 * 結果指標(Lagging Indicator)ばかり: 売上や利益など「終わった数字」しかなく、未来のアクションに繋がらない。 * 定義が曖昧: 「売上」の定義が出荷ベースなのか検収ベースなのか、部署によって認識がズレている。
2. 設計の鉄則:3つのレイヤー構造
ダッシュボードは「誰が」「何のために」見るかで、階層を分ける必要があります。
Layer 1: Executive(経営層向け)
* 目的: 全社の健康状態を瞬時に把握する。 * 内容: KGI(売上、利益)と、最重要KPI(解約率、受注残)。信号機(青・黄・赤)で異常を知らせる。 * 更新頻度: 日次〜週次。
Layer 2: Manager(管理者向け)
* 目的: 異常の原因を特定し、リソース配分を変える。 * 内容: チーム別、商品別、チャネル別のドリルダウン分析。予実対比。 * 更新頻度: 日次。
Layer 3: Operational(現場向け)
* 目的: 今日のアクションを決める。 * 内容: 今日架電すべきリスト、期限切れのチケット一覧。詳細な明細データ。 * 更新頻度: リアルタイム。
3. KPI選定の肝:「先行指標」を見つける
売上(結果)を変えることはできませんが、行動(先行指標)は変えられます。 ダッシュボードには、変えられる数字を配置します。
* 結果指標: 月間売上 1億円 * 先行指標: 商談数、提案書提出数、デモ実施数
「来月の売上が足りなさそうだ」とわかった時、「デモ実施数をあと10件増やそう」という具体的なアクションが打てるようにするのが、ダッシュボードの役割です。
4. UI/UXデザイン:思考の負荷を下げる
BIツールは「お絵かきツール」ではありません。認知心理学に基づいたデザインが必要です。
Zの法則・Fの法則
人の視線は左上から始まります。 最も重要な数字(KGI)を「左上」に大きなフォントで配置します。右下に行くほど詳細な情報にします。
色のユニバーサルデザイン
「赤=危険」「青=安全」は直感的ですが、色覚多様性に配慮し、色だけでなく形状(アイコンや矢印)でも状態がわかるようにします。 また、無意味なカラフルさはノイズです。基本はグレーベースで、注目させたい箇所だけ色を使います。
比較対象の明示
数字は単体では意味を持ちません。「100万円」が良いのか悪いのか判断できません。 必ず「前月比」「前年同月比」「目標比」をセットで表示し、トレンド(上昇・下降)を矢印で示します。
5. 運用:ダッシュボードを会議の中心に
ダッシュボードを作って終わりではありません。 経営会議や週次定例では、PowerPointの資料を作らず、「ダッシュボードをプロジェクターに投影して会話する」ルールにします。
「このグラフ、数字がおかしいのでは?」という議論が出たら、その場でドリルダウンしてデータを確認します。これにより、データの品質も向上し、会議の意思決定スピードが格段に上がります。
まとめ:ダッシュボードは「意思決定のOS」
優れたダッシュボードは、組織の視座を合わせ、自律的な改善サイクルを回すための「OS(基盤)」となります。 Wizitでは、KPI設計のコンサルティングから、Tableau/Lookerの実装、社内への定着化支援までを一気通貫でサポートします。
あなたの会社のデータは、眠っていませんか?それとも、未来を照らしていますか?
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