生成AIを実務に落とす:PoCから運用定着までのロードマップ【2025年版】
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コンサルティング2025.01.1525分

生成AIを実務に落とす:PoCから運用定着までのロードマップ【2025年版】

2023年の「生成AI元年」から時が経ち、2025年の今、企業の関心は「AIで何ができるか(可能性)」から「AIでどう稼ぐか/どうコストを下げるか(実効性)」へと完全にシフトしました。

しかし、多くの企業が「PoC(概念実証)貧乏」に陥っています。 「とりあえずChatGPTを導入したが使われない」「RAG(検索拡張生成)を作ったが回答精度が低い」——。

本記事では、生成AIを単なるおもちゃで終わらせず、企業のコア業務に組み込み、運用定着させるまでの具体的なロードマップを、Wizitの支援実績に基づいて解説します。

AIとビジネスの融合

AIとビジネスの融合

Phase 1: 戦略策定とユースケース選定(Week 1-4)

いきなり開発を始めてはいけません。「どの業務にAIを適用すればROI(投資対効果)が出るか」を見極めるのが最重要です。

1-1. 業務の棚卸しとAI適性診断

全社的な業務フローを可視化し、以下の基準でAI適用領域を選定します。 * テキスト処理の量が多い: 議事録、日報、問い合わせ対応履歴など。 * 定型化されているが判断が必要: 一次スクリーニング、分類、要約。 * ミスが許容される(Human in the loop): 最終確認を人間ができる領域。

推奨ユースケース例: * 社内ドキュメント検索・回答(社内ヘルプデスク) * 営業ロープレ・商談準備の壁打ち * 契約書・仕様書の一次レビュー * マーケティングコンテンツ(ブログ、メール、SNS)のドラフト生成

1-2. LLM選定とアーキテクチャ設計

2025年現在、選択肢は多様です。 * GPT-4o (OpenAI): 最高性能。複雑な推論が必要なタスク向け。 * Claude 3.5 Sonnet (Anthropic): 自然な日本語、長文読解、コーディングに強み。 * Gemini 1.5 Pro (Google): 巨大なコンテキストウィンドウ(長文入力)が必要な場合。 * SLM (Small Language Models): オンプレミスで動かす場合や、コストを抑えたい特定のタスク向け。

セキュリティ要件(Azure OpenAI ServiceやAWS Bedrockの利用)を含め、企業のポリシーに合わせた基盤を選定します。

Phase 2: プロトタイピングとPoC(Week 5-8)

小さく作って、素早く検証します。ここでのポイントは「プロンプトエンジニアリング」「RAG精度向上」です。

2-1. RAG(Retrieval-Augmented Generation)の構築

社内データに基づいて回答させるRAGは必須技術ですが、単にデータを突っ込むだけでは機能しません。 * データのクレンジング: ゴミデータを入れたらゴミが出てきます(Garbage In, Garbage Out)。PDFのテキスト抽出精度を高め、古いデータを削除します。 * チャンキング戦略: データをどのような単位で分割するか(意味のまとまり、文字数)が検索精度を左右します。 * ハイブリッド検索: キーワード検索とベクトル検索を組み合わせ、ヒット率を高めます。

2-2. プロンプトの標準化

「いい感じで要約して」という曖昧な指示ではなく、構造化されたプロンプトテンプレートを作成します。 * 役割定義(Role): 「あなたはベテランの法務担当者です」 * 制約条件(Constraints): 「文字数は400字以内」「箇条書きを使用」「断定的な表現を避ける」 * 出力形式(Output Format): JSON、Markdown、表形式など。

Phase 3: パイロット運用とUX改善(Week 9-12)

特定の部署(例:カスタマーサポート部、法務部)に限定して導入し、実際のフィードバックを集めます。

3-1. ユーザー体験(UX)の磨き込み

AIの回答速度(レイテンシ)やUIの使いやすさは、定着率に直結します。 * ストリーミング表示の実装(待ち時間の体感短縮)。 * 「回答の再生成」「ソースの確認」ボタンの配置。 * Slack/Teams連携(普段使っているツールから離脱させない)。

3-2. 評価指標(Evaluation)の確立

「なんとなく便利」ではなく、数値で評価します。 * 定量的指標: 業務時間の削減率、対応件数の増加率。 * 定性的指標: 回答の正確性(Hallucination率)、ユーザー満足度(Good/Bad評価)。 * LLM-as-a-Judge: 生成された回答の品質を、別のLLMを使って自動採点させる仕組みの導入。

Phase 4: 全社展開とガバナンス(Week 13-)

成功事例を横展開し、運用を制度化します。

4-1. AIリテラシー教育

ツールを入れるだけでは使われません。 * 全社員向けのプロンプトエンジニアリング研修。 * 「AIは嘘をつく(ハルシネーション)」リスクの周知と、ファクトチェックの義務化。

4-2. ガバナンスガイドライン

* 入力データの制限(個人情報、機密情報の扱い)。 * 著作権侵害リスクへの対応。 * 利用状況のモニタリングと監査ログの保存。

成功の鍵:AI Ops(運用基盤)の構築

AIシステムは「作って終わり」ではありません。モデルの性能は日々進化し、社内データも更新されます。 MLOps / LLMOps の考え方を取り入れ、継続的にプロンプトを改善し、参照データを最新化し、モデルをアップデートする運用体制(Human in the loop)を構築することが、長期的な競争優位につながります。

Wizitは、単なるツールの導入支援にとどまらず、業務プロセスの再設計から組織への定着、そしてセキュアな運用基盤の構築まで、End-to-Endで企業の生成AI活用を伴走支援します。

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[お問い合わせ] 「自社に合った生成AIの活用法を知りたい」「PoCで止まっているプロジェクトを再起動したい」など、お気軽にご相談ください。