カスタムAIエージェントはもう古い──Claude CodeとSkillsが切り拓く業務自動化の新時代
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AI / AI技術関連2026.02.1112分

カスタムAIエージェントはもう古い──Claude CodeとSkillsが切り拓く業務自動化の新時代

はじめに

「AIエージェントを自社で構築しよう」──2024年から2025年にかけて、多くの企業がこの決断を下しました。しかし2026年2月現在、その多くが思わぬ技術的負債に直面しています。一方で、Claude Codeという新しいアプローチが、カスタムエージェント開発の常識を覆しつつあります。

本記事では、なぜカスタムAIエージェントが負債化するのか、そしてClaude CodeとSkillsがどのように業務課題を解決するのかを、最新の情報と具体例を交えて解説します。

カスタムAIエージェントが抱える3つの罠

1. 過剰な複雑性の罠

多くの企業が陥るのが、「すべてを自前で作ろう」という思考です。Tool Use(Function Calling)の実装、エラーハンドリング、ストリーミング対応、バッチ処理──Anthropic SDKが提供する機能は強力ですが、適切に設計・運用するには高度な専門知識が必要です。

以下は典型的なカスタムエージェントの実装例です:

```typescript import Anthropic from '@anthropic-ai/sdk'; import { betaZodTool } from '@anthropic-ai/sdk/helpers/beta/zod'; import { z } from 'zod';

const anthropic = new Anthropic();

// ツール定義 const weatherTool = betaZodTool({ name: 'get_weather', inputSchema: z.object({ location: z.string(), }), description: 'Get the current weather', run: (input) => { return `Weather in ${input.location} is foggy`; }, });

// エージェント実行 const finalMessage = await anthropic.beta.messages.toolRunner({ model: 'claude-3-5-sonnet-20241022', max_tokens: 1000, messages: [{ role: 'user', content: 'Weather in Tokyo?' }], tools: [weatherTool], }); ```

一見シンプルですが、これを本番運用レベルに引き上げるには、以下が必要になります:

  • エラーハンドリング(ToolError、ネットワークエラー、タイムアウト)
  • ロギングとモニタリング
  • レート制限への対応
  • トークン使用量の最適化
  • マルチターン会話の状態管理
  • セキュリティ対策(プロンプトインジェクション、サンドボックス化)

これらすべてを自社で実装・保守するコストは、当初の見積もりを大きく上回ります。

2. メンテナンスの罠

AIエージェントの技術進化は驚異的なスピードです。2026年2月5日にリリースされたClaude Opus 4.6は、コーディング、Computer Use、Tool Use、検索、金融分野で業界をリードする性能を達成しました。しかし、カスタムエージェントを最新モデルに対応させるには、プロンプト調整、API移行、パフォーマンステストが必要です。

さらに、以下のような継続的なメンテナンスが発生します:

  • 新しいツール・API連携の追加
  • ユーザーフィードバックに基づく改善
  • セキュリティパッチの適用
  • ドキュメントの更新
  • チームメンバーへのトレーニング

あるFinTech企業の事例では、初期開発に3ヶ月、その後の年間メンテナンスコストが開発コストの2倍に達したケースもあります。

3. スケールの罠

単一タスク向けに設計されたエージェントは、業務が拡大するにつれて限界を迎えます。新しいユースケースごとに新しいエージェントを作ると、システム全体が複雑化し、管理コストが爆発的に増大します。

以下の図は、カスタムエージェントの数と運用コストの関係を示しています:

エージェントが増えるほど、以下の問題が深刻化します:

  • エージェント間の依存関係管理
  • 共通ロジックの重複
  • バージョン管理の複雑化
  • デプロイとロールバックの困難化

Claude Codeが提供する新しいアプローチ

すべてが統合されたエージェント環境

Claude Codeは、カスタムエージェント開発の複雑さを根本から解決します。ターミナル、IDE(VS Code、JetBrains)、デスクトップアプリ、Webブラウザ──どの環境でも同じエージェントエンジンが動作し、統一された体験を提供します。

以下は、Claude Codeが提供する主要機能です:

機能カテゴリ提供機能従来の課題
コードベース理解プロジェクト全体の構造を自動把握手動でのコンテキスト構築が必要
ファイル編集複数ファイルの同時編集、差分表示ツール実装とエラーハンドリング
Git統合コミット、ブランチ、PR作成を自然言語でGit CLIのラッピング実装
MCP対応外部ツール・データソースへの標準接続個別のAPI統合開発
拡張性Skills、Hooks、CLAUDE.mdカスタムプラグインシステムの開発

これらすべてが追加実装なしで利用可能です。

実際の使用例:テスト作成とデプロイ

例えば、未テストのコードにテストを追加し、テストを実行し、失敗を修正する──という一連のタスクを見てみましょう。

従来のカスタムエージェント:

  • テストファイルを生成するツールを実装
  • テスト実行のツールを実装
  • エラーパースとリトライロジックを実装
  • これらを統合するオーケストレーションコードを記述

Claude Code: ```bash claude "write tests for the auth module, run them, and fix any failures" ```

たった1行のコマンドで、Claude Codeは以下を実行します:

  • authモジュールのコードを読み、理解する
  • 適切なテストケースを生成する
  • テストを実行する
  • 失敗したテストを分析する
  • コードを修正する
  • 再度テストを実行し、成功を確認する

以下のシーケンス図は、Claude Codeの処理フローを示しています:

このアプローチの利点は明確です:

  • 開発時間ゼロ: ツール実装が不要
  • メンテナンスコストゼロ: Claude Codeの更新で自動的に改善
  • 学習コスト最小: 自然言語コマンドのみ

Claude Skills:再利用可能なワークフローの標準化

Skillsの仕組み

Claude Skillsは、繰り返し実行するワークフローを再利用可能な形で標準化する仕組みです。`SKILL.md`ファイルに指示を記述するだけで、Claude Codeがスキルとして認識し、適切なタイミングで自動実行します。

Skillsの配置場所によって、スコープが決まります:

配置場所パス適用範囲
エンタープライズ管理設定組織全体
パーソナル`~/.claude/skills//SKILL.md`全プロジェクト
プロジェクト`.claude/skills//SKILL.md`当該プロジェクトのみ
プラグイン`/skills//SKILL.md`プラグイン有効時

実例:GitHub Issue修正ワークフロー

以下は、GitHub Issueを自動修正するSkillの例です:

```yaml --- name: fix-issue description: Fix a GitHub issue following coding standards disable-model-invocation: true allowed-tools: Read, Grep, Edit, Bash(git *, gh *) ---

Fix GitHub issue $ARGUMENTS following our coding standards.

Steps

  • Fetch the issue : Use `gh issue view $ARGUMENTS` to read the issue
  • Understand context : Read related files mentioned in the issue
  • Implement the fix : Apply changes following CLAUDE.md guidelines
  • Write tests : Add tests covering the fix
  • Run tests : Ensure all tests pass
  • Commit : Create a commit with message format: "Fix #$ARGUMENTS: [brief description]"
  • Verify : Run `git log -1` to confirm the commit

Quality checks

  • Code follows project style guide
  • No new lint warnings
  • Tests cover edge cases
  • Commit message is descriptive

```

このSkillを使うには: ```bash /fix-issue 123 ```

Claude Codeは自動的に:

  • Issue #123の内容を取得
  • 関連ファイルを特定
  • 修正を実装
  • テストを追加
  • テストを実行
  • コミットを作成

従来のカスタムエージェントでは、これらすべてのステップをコードで実装し、エラーハンドリングを追加し、ドキュメントを書き、チームにトレーニングする必要がありました。Skillsでは、自然言語の指示を書くだけです。

動的コンテキスト注入

Skillsは、実行時にシェルコマンドを実行し、その結果をプロンプトに埋め込む動的コンテキスト注入をサポートしています。

以下は、Pull Request要約スキルの例です:

```yaml --- name: pr-summary description: Summarize changes in a pull request context: fork agent: Explore allowed-tools: Bash(gh *) ---

Pull request context

  • PR diff: !`gh pr diff`
  • PR comments: !`gh pr view --comments`
  • Changed files: !`gh pr diff --name-only`

Your task

Summarize this pull request in Japanese:

  • 変更概要 : 何を変更したか(3-5行)
  • 影響範囲 : どのモジュール・機能に影響するか
  • レビューポイント : レビュアーが注目すべき点
  • テスト状況 : テストの追加・変更内容

Use clear, concise Japanese suitable for technical documentation. ```

`!\`gh pr diff\``という記法により、スキル実行時に実際のPR差分が取得され、プロンプトに埋め込まれます。これはプリプロセスであり、Claude Codeがコマンドを実行するのではなく、実行結果がプロンプトの一部として渡されます。

従来のカスタムエージェントでは、以下が必要でした:

  • GitHub API連携の実装
  • 差分パースロジック
  • コメント取得と整形
  • エラーハンドリング

Skillsでは、`gh` CLIと`!\`...\``記法だけで実現できます。

Skillsとサブエージェントの連携

`context: fork`フロントマターを指定すると、スキルは独立したサブエージェントとして実行されます。これにより、メインの会話履歴を汚染せず、大規模なタスクを並列実行できます。

```yaml --- name: deep-research description: Research a topic thoroughly context: fork agent: Explore ---

Research $ARGUMENTS thoroughly:

  • Find relevant files using Glob and Grep
  • Read and analyze the code
  • Summarize findings with specific file references

```

以下の図は、Skillsとサブエージェントのアーキテクチャを示しています:

この仕組みにより、以下が可能になります:

  • 並列実行: 複数のSkillsを同時に実行
  • 専門化: Explore、Plan、general-purposeなど、タスクに最適なエージェントタイプを選択
  • コンテキスト分離: メインエージェントのトークン使用量を節約

カスタムエージェントが適している場面

すべてのケースでClaude Codeが最適というわけではありません。以下のような場合は、カスタムエージェントの構築が依然として有効です:

1. 高度に特化したドメイン知識が必要な場合

医療診断支援、法的文書分析、金融モデリングなど、専門的な推論ロジック独自の知識ベースが不可欠な場合は、カスタムエージェントが適しています。

2. 既存システムとの深い統合が必要な場合

エンタープライズ環境で、レガシーシステム独自プロトコルとの連携が必要な場合、カスタムエージェントによる細かい制御が有効です。

3. 極めて高いセキュリティ要件がある場合

金融機関や政府機関など、データ主権オンプレミス運用が必須の場合は、カスタムエージェントとセルフホストが選択肢になります。

ただし、これらのケースでも、Agent SDKを使えば、Claude Codeのツールと機能を活用しながら、カスタムオーケストレーションを実装できます。完全にゼロから作るよりも、大幅に開発コストを削減できます。

Claude Code導入のベストプラクティス

1. CLAUDE.mdで標準を定義する

プロジェクトルートに`CLAUDE.md`ファイルを配置すると、Claude Codeが毎回セッション開始時に読み込みます。ここにコーディング規約、アーキテクチャ方針、推奨ライブラリ、レビューチェックリストを記述しましょう。

```markdown # Coding Standards

Architecture

  • Use microservices pattern
  • Event-driven communication via Kafka

Preferred Libraries

  • State management: Zustand
  • API client: tRPC
  • Testing: Vitest

Review Checklist

  • [ ] All tests pass
  • [ ] No new TypeScript errors
  • [ ] Code follows ESLint rules
  • [ ] Documentation updated

```

2. Hooksで自動化を追加する

Hooksを使えば、ツール実行の前後に自動でシェルコマンドを実行できます。例えば、ファイル編集後に自動フォーマット、コミット前にリント実行などが可能です。

```yaml # .claude/settings.yml hooks: post-edit: "npx prettier --write {file}" pre-commit: "npm run lint" ```

3. チーム全体でSkillsを共有する

プロジェクトの`.claude/skills/`ディレクトリをバージョン管理に含めることで、チーム全体で同じワークフローを共有できます。新しいメンバーも、既存のSkillsをすぐに利用できます。

4. MCPで外部ツールと連携する

Model Context Protocol(MCP)は、AIツールと外部データソースを接続するオープン標準です。Google Drive、Jira、Slackなど、既存のツールと簡単に連携できます。

```typescript import { Client } from '@modelcontextprotocol/sdk/client/index.js'; import { StdioClientTransport } from '@modelcontextprotocol/sdk/client/stdio.js';

const transport = new StdioClientTransport({ command: 'mcp-server', args: [] }); const mcpClient = new Client({ name: 'my-client', version: '1.0.0' }); await mcpClient.connect(transport); ```

MCPを使えば、カスタムツール開発の大部分を標準プロトコルに置き換えられます。

まとめ:負債を抱えず、価値を最大化する

2026年2月現在、AIエージェント技術は構築フェーズから活用フェーズへ移行しています。カスタムエージェント開発に数ヶ月を費やすのではなく、Claude CodeとSkillsを使って数時間で業務課題を解決する──これが新しい標準になりつつあります。

カスタムエージェントが技術的負債になる理由は明確です:

  • 過剰な複雑性
  • 継続的なメンテナンスコスト
  • スケールの限界

一方、Claude CodeとSkillsは:

  • 統合されたエージェント環境で複雑性を排除
  • 自動アップデートでメンテナンスコストを削減
  • 再利用可能なSkillsでスケーラビリティを実現

もちろん、高度に特化したドメインや厳格なセキュリティ要件がある場合は、カスタムエージェントが依然として有効です。しかし、その場合でもAgent SDKを活用することで、開発コストを大幅に削減できます。

2026年、AIエージェントの価値は「いかに高度なシステムを構築したか」ではなく、「いかに早く業務課題を解決したか」で測られます。Claude CodeとSkillsは、その実現を強力に後押しします。

参考文献