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戦略×実行の両利きコンサルとは?──Wizit流「走りながら変える」型
はじめに
大手日本企業の経営層から、こんな声をよく聞きます。
「コンサルタントには戦略を立ててもらったが、実行まで見てくれない」 「実装を始めたら想定と違う現実が出てきたが、戦略案は変わらない」 「現場の知見が戦略に反映されず、机上の空論になっている」
従来型のコンサルティングは、戦略フェーズと実行フェーズが分離していました。戦略コンサルが設計を完成させ、実装コンサルに引き継ぎ、その後はサポート終了──こうした単線的なプロセスがスタンダードだったのです。
しかし、急速に変わるビジネス環境では、この「分離型」のアプローチは機能しません。市場データ、テクノロジーの進化、顧客ニーズ、自社の組織能力──こうした要素は戦略立案後に初めて明らかになることがほとんどです。にもかかわらず、「戦略は完成形」として実行を始めると、現実とのズレが蓄積し、やがて大きな損失につながります。
「走りながら変える」──これが、大企業が今、必要とするコンサルティングのあり方です。
Wizitが実践している「両利きコンサルティング」は、戦略立案と実行をサイクルさせ、実装の中で得られた学習を継続的に戦略に反映させるアプローチです。本記事では、このモデルの本質、従来型との違い、そして具体的な実装方法をお伝えします。
従来型コンサルの限界──「戦略と実行の断絶」
従来型のコンサルティングプロセスは、次のように進みます。
- 戦略フェーズ (4-8週間):データ分析、競合調査、シナリオプランニングを行い、最適な経営戦略を策定
- 引き継ぎ :戦略書を完成形として現場に手渡す
- 実行フェーズ (6-12ヶ月以上):内部チームが戦略に沿って実装を進める
- クローズ :成果測定後、プロジェクト完了
この構造が生む3つの問題:
① 戦略の硬直化 完成した戦略書は、立案当時の仮説に基づいています。しかし、実装が始まると、それまで見えなかった制約が浮かび上がります。システム統合の難しさ、組織文化との相克、予想外の市場変動──こうした「現実」は、戦略段階では仮説にすぎません。実装を進める中で新しい情報が得られても、戦略は変わらず、現場が無理やり合わせる結果になります。
② 実行チームの主体性喪失 「戦略はコンサルが決めたもの」という認識は、実行チームの創意工夫を奪います。彼らは単なる「執行者」となり、予期しない課題に直面しても、戦略の枠内での対応しか考えなくなります。
③ 学習の喪失 実装の過程で得られた多くの学習が、戦略に反映されないまま失われます。同じミスが繰り返され、組織全体としての学習速度が上がりません。
こうした問題を抱える企業は多く、「コンサルに頼った割に、期待した効果が出ていない」という相談を受けることが少なくありません。
両利きコンサルティング──「戦略と実行を循環させる」
両利き経営(Ambidexterity)という概念があります。これは、既存事業を深掘りする「搾取」と、新事業を開発する「探索」の両方を同時に進める経営方針を指します。
同じロジックを、コンサルティング方法論に適用したものが「両利きコンサルティング」です。
戦略を「探索」、実行を「搾取」と捉え、この両者を継続的に循環させることで、環境変化に適応しながら、確実に成果を出すアプローチです。
Wizit流の両利きコンサルティング・サイクル:
- 初期戦略策定 (4週間) →
- パイロット実装 (2-4週間) →
- 学習・戦略アップデート (1週間) →
- スケーリング実装 (4-8週間) →
- 再評価・戦略調整 (継続)
このサイクルの特徴は:
- 短いイテレーション:4週間単位で戦略を見直す
- 小さな実験:全社展開前に、パイロット段階で仮説を検証
- 学習のエンベッド:実装チームが得た知見が即座に戦略に反映される
- 共創的プロセス:クライアント企業の現場人材がコンサルと対等に判断に参加する
戦略×実行の「同時進行」が機能する理由
なぜ、同時進行型がうまくいくのか。3つの理由があります。
① リアルタイム仮説検証 戦略は、立案時点での「最良の推測」に過ぎません。パイロット実装を通じて、その推測が妥当かをすぐに検証できます。仮にズレがあれば、全社展開前に軌道修正できます。一方、戦略を完成形として実行に移す従来型では、半年後に「この戦略は現実に合わない」と気づくことになり、時間と資源の浪費につながります。
② 組織の学習速度向上 実装チームがコンサルとともに戦略をアップデートするプロセスに参加することで、彼らは「戦略の背後にある思考」を習得します。結果として、その後の経営判断の質が上がり、コンサルに頼らずに自走できる組織へと変わります。
③ 市場変化への敏捷性 3-4週間ごとに戦略を見直すサイクルがあれば、大きな市場変動や競争環境の急変に対して、素早く対応できます。従来型のように「戦略は動かせない」という硬直性がなくなるのです。
実践的なフレームワーク──「PDCA+学習」
Wizitが両利きコンサルティングを実装する際に用いるフレームワークが、「PDCA+学習」です。
Plan(計画)
- 初期仮説の設定:「顧客獲得コストを30%削減する」など、具体的で計測可能な目標
- リスク假定の明示化:「どの仮説が外れたら計画は成り立たないか」を事前に列挙
- パイロットスコープの限定:全社ではなく、1部門・1プロセス・1顧客セグメント等に絞る
Do(実行)
- 現場チームとコンサルの週次ミーティング:日々の実装状況をリアルタイムで共有
- 予期しない課題の即時記録:「想定と異なった点」を日々ログに記録
- トライアルの柔軟な調整:仮説が明らかに外れたら、躊躇なくアプローチを変更
Check(評価)
- 週次の仮説検証:「この施策は計画通りに機能しているか」を定量的に評価
- 外れた仮説の分析:「なぜ外れたのか」の根本原因を追求
- 学習の文書化:何が学べたかを、組織資産として記録
Act(改善・戦略アップデート)
- 戦略の微調整:学習に基づいて、初期戦略を改変
- スケーリング計画の策定:パイロット成功時の拡大方法を設計
- 次サイクルの開始
このサイクルが4週間ごとに回るため、3ヶ月で3ターンの学習と改善が得られます。
大企業での導入チェックリスト
両利きコンサルティングを導入する際、チェックすべき項目は以下の通りです。
✓ 経営層のコミットメント
- 「戦略は完成形ではなく、試行錯誤の過程である」という理解がありますか
- 短期的な実装の試行錯誤に対して、経営陣は耐性を持っていますか
✓ 現場チームの参画
- 実装チームがコンサルとの戦略協議に参加する体制がありますか
- 週次での定例会議を、継続的に開催できる人員配置がされていますか
✓ データ基盤
- 実装結果をリアルタイムで測定・可視化できるデータシステムがありますか
- 「仮説が外れたか」を判断するための定量的指標は設定できていますか
✓ スコープの適切性
- パイロットの対象(部門・プロセス・顧客)は限定的でかつ重要ですか
- 全社展開ではなく、小さく始められる事業領域ですか
✓ 外部環境の不確実性
- 戦略対象とする市場や技術領域は、変化が激しいですか
- その場合、従来の「一度立てたら動かさない戦略」では対応できていませんか
これらが「はい」で答えられるほど、両利きコンサルティングの効果が高いプロジェクトになります。
従来型との違い:実例で見る
従来型:DX推進プロジェクト
- 月日0-2ヶ月:IT企画部とコンサルが、全社DX戦略を完成させる
- 月日3-12ヶ月:各部門が戦略に沿ってシステム導入を進める
- 結果:導入完了時に現場の使い勝手の問題が判明。運用コストが想定の1.5倍になる
両利き型:同じDX推進
- 月日0-1ヶ月:営業部の営業管理プロセスをパイロット対象に、初期DX戦略を策定
- 月日1-2ヶ月:営業部で小規模なシステム導入を実施。週次で現場からのフィードバック収集
- 月日2-3ヶ月:営業部での学習を踏まえ、DX戦略を全社展開版にアップデート。その他部門での要件定義に反映
- 月日3-6ヶ月:改定戦略に基づき、全社システム導入を進める
- 結果:現場の実情が戦略に反映されているため、導入がスムーズに進み、導入後の定着率が高い
この違いは、大企業ほど顕著になります。規模が大きいほど、全体最適と部門最適のズレが生まれやすく、その調整には「走りながら変える」アプローチが不可欠だからです。
Wizitが両利きコンサルティングを選んだ理由
Wizitは、AI活用コンサルティングを専門とする企業です。AI技術そのものが、極めて変化が速い領域です。数ヶ月前に最適だったAI活用方法が、今月の新しいモデル登場で陳腐化することすら珍しくありません。
こうした環境では、「戦略は完成形」というアプローチは機能しません。むしろ、継続的に新しい技術トレンドを戦略に反映させ、クライアント企業と一緒に学習しながら最適な実装方法を見つけていく──そうした共創的プロセスが、本当の価値を生み出すのです。
加えて、大企業の経営層と現場のギャップを埋め、「戦略が机上の空論にならない」ようにするためにも、両利きアプローチが有効です。
まとめ:「走りながら変える」組織へ
AI活用、DX推進、新市場開拓──大企業が直面する多くの重要課題は、不確実性が高く、かつ、実装の中で多くの学習が生まれる領域です。
こうした課題に対して、従来型の「戦略完成 → 実行」という単線的なプロセスは、もはや有効ではありません。必要なのは、戦略と実行を循環させ、実装の学習を戦略にフィードバックし、組織全体で適応を続ける「両利きコンサルティング」です。
Wizitは、クライアント企業の経営層、現場チーム、そしてコンサルタント自身が、一緒に「走りながら変える」プロセスに参加することで、初めて出せる価値があると考えています。
不確実性が高いからこそ、「一緒に変わる」コンサルティングを。